好きだと伝えたことを、後悔している。伝えなければ、今もあの人の隣で普通に笑っていられたかもしれない。言った瞬間の相手の顔を、何度も思い出してしまう。
告白の後悔は、人に話しにくい。「言えただけ偉い」と励まされるのが目に見えているからだ。けれど悔やんでいるのは勇気の有無ではない。自分の気持ちを優先して、相手に何かを背負わせてしまったのではないか。その問いは、慰めの言葉では消えない。
赤城大空の『二度めの夏、二度と会えない君』は、まさにその後悔から始まる。死に際の彼女に告げてしまった気持ちを「罪」と呼ぶ少年が、時間を巻き戻され、もう一度同じ夏を生きる。聴き終えても、言った言葉は取り消せない。ただ、伝えることと黙ること、どちらが相手を大切にすることなのか。その問いを、自分を責める材料ではなく、考え直せる問いとして持ち帰れる。
再生時間は7時間17分。通勤の往復なら4日ほど。今夜は、二度めの夏が始まるところまでの30分だけでいい。
どんな話か
死に際の彼女に、言ってはいけない気持ちを告げてしまった「俺」。その後悔を抱えたまま、彼はタイムリープによって、彼女と過ごした夏をもう一度迎える。今度こそ、自分に嘘をつき通すと決めて。
声で聴くとどう変わるか
ナレーターは米内佑希と土師亜文の二人。後悔を抱えた少年の語りで進む物語なので、声で聴くと、彼が強がって口にする言葉の裏側が透けて聞こえる。文字なら読み流してしまう軽口が、声になると、無理をして明るくしているのだと分かってしまう。この物語の痛みは、そこにある。
小学館ガガガ文庫の一冊で、7時間17分。ひと夏の話なので、毎日少しずつ聴き進めるのが合う。家事の合間に1時間ずつなら一週間。物語の夏と、聴いている日々が並んで進んでいく。
本音を飲み込んで笑う場面で手が止まった
手が止まったのは、二度めの夏で、少年が彼女の前で本音を飲み込む場面だった。一度めは言ってしまった。二度めは言わないと決めている。同じ気持ちを抱えたまま、正反対の選択をする。
この作品は、黙ることを美化しない。嘘をつくことで守れるものがあれば、嘘をつくことで手放すものもある。その両方を、夏の明るさの中で聴かせる。だから告白を悔やんでいる人ほど、あのときの自分を一方的に裁かなくて済むようになる。
いま聴くなら『二度めの夏、二度と会えない君』から。少年が二度めの夏に目を覚ますところで、この物語の約束事が分かる。
こんな人に向いている
- 好きだと伝えたことを、後悔したことがある
- 同じ時間をやり直すタイムリープの話が好き
- 夏の青春小説を、声で聴いてみたい
向いていないのは、病や死に触れる話を今は聴きたくない人。本作は最初から、彼女がいなくなることを前提に進む。その重さを受け止められる夜に、あらためて再生してほしい。
ライトノベルのレーベルから出ている作品だが、中心にあるのは「言った言葉を背負う」という普遍的な痛みだ。レーベルで避けてきた人にも、一度は手に取ってほしい。告白を悔やんだ経験があるなら、少年の迷いは他人事として聴けないはずだ。
近い気分の一冊
夏と時間をめぐる話で続けるなら、八目迷の『夏へのトンネル、さよならの出口』へ。同じガガガ文庫の青春小説で、あちらは失ったものを取り戻すために時間を差し出す話、こちらは取り戻した時間の中で気持ちを差し出さずにおく話だ。どちらも、夏の終わりに何を持ち帰るかを問いかけてくる。『夏へのトンネル、さよならの出口』オーディブル感想
今夜の気分がまだ定まらないなら、オーディブルで聴ける恋愛小説おすすめ6選 から入ってほしい。気分から逆に引ける形で並べてある。
今夜から聴くには
作品ページを開くと、いま聴き放題の対象なら「聴き放題で聴く」と表示される。その場合は追加の支払いなしでそのまま再生できる。対象は入れ替わるので、表示だけ見てほしい。『二度めの夏、二度と会えない君』のページを開く
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今夜は最初の30分だけでいい。二度めの夏が始まった朝、少年が何を決めるのかを聴いてから眠ってほしい。

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